●人工透析とは
人には2つの腎臓があり常に体中の血液中の尿毒症物質を除去し、さらに体中の水分量や電解質の調整を
行うために尿を生産して体の状態を良い状態に保っています。さまざまな原因で腎臓の機能は失われ、
生命を維持することが難しくなります。そこで人工的に尿毒症物質や排出されにくくなった水分を体外に
排出することが出来る治療法を人工透析と言います。
●血液透析、HD(Hemodialysis)
血液透析は血管に針を刺して血液を透析装置とダイアライザーとよばれる人工腎臓に送る必要があるので、一般的に前腕の動脈と静脈を皮下でつなぎ合わせ、太くなった血管(シャント)を血液の取り出し口を作ります。そこから血液を体外に取り出し、ダイアライザーに通すことによって血液を浄化し、余剰な水分を取り除いたあと体にもどします。通常は施設で週に3回、3~5時間の治療が必要です。
●HDFとは
血液透析(HD)に濾過を加えた治療法を血液透析濾過療法、HDF(Hemodialysis Filtration)と呼び、透析供給装置より送液される透析液を補充液として使用した血液透析濾過療法、オンラインHDF(on-line Hemodialysis Filtration)と呼びます。
●オンラインHDFとは
HDFには補液する場所がヘモダイアフィルターの前か後かの違いにより前希釈と後希釈に分類します。前希釈では大量の透析液を補充液として使用し血液を希釈しているのでヘモダイアフィルターの内部で血液濃縮が起こりにくく、血球成分への影響も少ないと考えられています。また希釈量の増加に伴い、より多くの中・大分子量以上の物質を取り除くことが出来ます。当院では前希釈のオンラインHDFを推奨しております。
●オンラインHDFのメリット
1.普通の透析で取り切れない中・大分子量以上の物質の除去に優れています。
透析アミロイドーシスの原因とされているβ2-ミクログロブリン (β2-MG)の除去効率が良くなります。手根管症候群などのアミロイドの沈着、破壊性脊椎炎などの合併症を予防できます。
2.全身の痒み、イライラ感などの症状改善も認められます。
痒み、イライラなどの感覚が主に下肢に現れるレストレスレッグス症候群(RLS)の原因とされている
α1-ミクログロブリン(α1-MG)の除去効率が上がり、症状が改善されます。
3.透析中の血圧が安定します。
通常のHD で高血流にすると、溶質除去の急激な亢進が原因で血漿浸透圧の低下が起こり、
透析中の血圧低下や透析後のだるさを生じることがあります。しかし前希釈オンラインHDFの場合、
等張性置換液が補充されることで血漿浸透圧の低下が是正され、透析中の血圧は維持され、
大量の補液によって浸透圧の変化がHDの時より抑えられるので透析中の血圧は維持され
透析後のだるさも軽減できます。
●オンラインHDFデメリット
オンラインHDFで補液量を増やすことで中・大分子量以上の物質は抜けやすくなりますが、
HDに比べて身体に必要なタンパク質の一種のアルブミンも抜けやすくなるので、
栄養のしっかり摂れる人でないとデメリットが著明となります。
●超純粋透析液の使用
透析液を補充液に使用するためには厳重な透析液の水質管理をしなければなりません。
通常の水道水は細菌の成分であるエンドトキシンという物質が含まれています。
当院では生菌培養検査、エンドトキシン検査を毎月行い、日本透析医学会が制定する
超純粋透析液(ウルトラピュア透析液)の基準を満たす透析液を作成しています。